※一部PRあり

春のコートはステンカラーとトレンチ。ラグランかセットインか。1枚袖か2枚袖か。

衣日記

そろそろ春も近づいてきますが、寒い日と暖かい日が交互に繰り返すようになります。

そんな曖昧な季節の変わり目に、うってつけのコートをご紹介したいと思います。

先日は冬真っ只中に活躍する厚手生地のコート、アルスターコートをご紹介しましたが
(アルスターコートの記事はコチラ↓)
アルスターコート~オンオフ問わず着られる冬の万能コート~オーダー品レビュー

今回は薄手生地のステンカラーコートまたの名をバルマカーンコート

そしてトレンチコートの記事になります。

この二つのコートは紳士服コートとして双璧をなす存在ですが
どちらも生地はがっしりとしたコットンギャバジンが主流です。

密度高く織られたウールギャバジン製のものや、化学繊維が混ざったものもありますが、どの生地にしても薄手のバリッとした生地で、主に保温性能というよりも防風性能に特化しています。

ですので春秋の比較的少し肌寒い時期に加えて、冬の少し温かい日であれば中に
ニットなどを着込めば十分に快適に過ごせます。

ステンカラーとトレンチどちらがいいのか?という疑問もあるかと思いますが

これに関してはお好きな方で。というのが個人的見解です。

トレンチコートの方がダブル仕立てになっているので防寒性がありますが、クラシックで厳かな雰囲気が出る傾向にあります。いわゆる、オジさんくささが出やすいので、特に若い方が現代で着るには少し抵抗があるかと思います。ワタシ自身、若い頃うまく着こなせなくて随分悩みました。
しかし女性が着るとキャリアウーマン的な雰囲気が出て、若い方でもとてもかっこよくきまるので不思議なものです。

ステンカラーコートは上から羽織るだけという着方で、少し暖かい時期に向いています。
とてもシンプルなつくりで現代でも馴染み深い服ですので、老若男女問わず普遍的に着れます。

無難なものはステンカラーコートで、より着こなしやコーディネートを悩みながら楽しみたい方はトレンチコートといったところでしょうか。

前置きはこのくらいにしまして…

ここからが本題になります。

この2つのコートは

肩のつくりがラグランスリーブセットインスリーブの2パターンがありまして

更に袖のつくりが1枚袖と、2枚もしくは3枚袖の2つに大きく分かれます。

今回は

・肩はラグランかセットインか

・袖は1枚袖か2、3枚袖か

この2点についての、コートの選び方について書いていきます。

肩はラグランかセットインか

まずラグランスリーブとは、カジュアル服でよく見かける服の構造で
肩と袖の縫い合わせが首元から脇下にかけて斜めにステッチが入っています。

それに対してセットインスリーブは、肩と袖の縫い合わせが
肩先から脇下にかけて垂直にステッチが入る構造です。

この2タイプのコートの選び方ですが…

結論から申し上げますと

1.コートの下に着る服の理由として

 カジュアル服として着るならラグランスリーブ

 ビジネス服として着るならセットインスリーブ

また、

2.身体の構造上の理由として

 ご自身の身体が『なで肩』ならラグランスリーブ

 『いかり肩』ならセットインスリーブ

と考えております。

1.コートの下に着る服の理由として

実際に下に着る服としてカジュアル服、ビジネス服に、ラグランスリーブ、セットインスリーブそれぞれのコートを合わせた例を挙げながら解説していきます。

ワタシが所有しているものが

ラグランスリーブのステンカラーコート


セットインスリーブのステンカラーコート

ラグランスリーブのトレンチコート

になりますので、それぞれを比較しながら検証してみたいと思います。

カジュアル服の上にコートを着る場合

まずカジュアル服の場合、服に芯地の無い、非構築的な服です。特に肩回りは身体のラインに沿って自然に、なだらかなシルエットになります。

ですので、コートも同じように肩回りがなだらかなつくりになっているラグランスリーブですと、シルエット、服の構造ともにコートが下に着る服と一致することになります。ニット、スウェット、パーカーには同じラグランスリーブのつくりになっているものも多いです。
それでは実例写真を見ながら検証していきます。

・カジュアルなニットの上からラグラン、ステンカラーコートを羽織った例

肩のラインが身体に沿って丸くなっているのがわかります。
下に着るニットの肩ラインも丸みが出ており、よく馴染んでいるかと思われます。

・カジュアルなニットの上からセットイン、ステンカラーコートを羽織った例

↑コートの肩のラインに角がついているのがわかります。
下に着ている、肩の丸いニットに対して少々かっちりし過ぎている印象です。
コートの色がカジュアル寄りなので、ダメということでもなさそうです。

・カジュアルなニットの上からラグラン、トレンチコートを羽織った例

↑一見、エポーレットが付いている影響で肩が角張っているように見えます。
しかしエポーレットが無いものとみなすと、やはり肩のラインは丸みがあります。
こちらもニットの肩ラインとよく馴染んでいます。

ビジネス服の上にコートを着る場合

一方、スーツなどビジネス服の場合は、服に芯地のある構築的な服です。
肩回りはしっかりと角がつくようなつくりになっています。

その上に着るコートも同じように、縫い合わせが肩先からはじまり、角がついているセットインスリーブですと、シルエット、服の構造ともにコートが下に着る服と一致します。
こちらも実例写真を見ながら検証したいと思います。

・ビジネススーツの上からラグラン、ステンカラーコートを羽織った例

コートの肩ラインは丸みがついていますが、下に着るジャケットは角がついています。
ジャケット肩ラインに角がついているところから、コートの丸みあるラインが出っ張って
いることがわかります。肩幅もかなり大きく見えますね。
また、下はかっちりとしたスーツなのに、上に着るコートは丸みのあるシルエットで
カジュアルな雰囲気があります。
コート生地の色、柄がシックなものなので、こちらも全くダメということもないのですが。

・ビジネススーツの上からセットイン、ステンカラーコートを羽織った例

↑コートの肩ラインに角がついており、下に着るジャケットも角がついています。
不自然なシワ・出っ張りがなく、かなり綺麗に一致しているのがわかると思います。
先ほどのラグランコートに比べて肩がすっきりして、肩幅も大きくないのがわかります。
コートの色がカジュアル寄りなので、ビジネス服としては少しミスマッチ感がある気もしますが…。
こういった場合は、ネクタイの質感をカジュアルに寄せるだけでもかなり解消できそうです。

・ビジネススーツの上からラグラン、トレンチコートを羽織った例

↑エポーレットが付いている影響で下に着るジャケットと肩ラインが一致しているように
見えますが、向かって右側の肩を見るとシワが寄っているのが確認できます。
やはりラグランの丸みのあるラインが外側に出っ張っている影響かと思われます。
雰囲気的にはトレンチとスーツの相性はとても良いのですが。

2.身体の構造上の理由として

ワタクシ自身がかなりのいかり肩なのですが、いかり肩の場合、鎖骨と共に肩先が上がっていて角張っており、直角に近いもしくはそれ以上の角度になっています。
そのような体型の場合は、服の構造的に肩が角のついているセットインスリーブが良いと考えます。
いかり肩という体型とセットインの服の構造が一致するためです。

一方なで肩の人の場合、鎖骨と共に肩先が下がっていて、首から肩にかけて一直線に近い斜面でありなだらかな角度の肩になります。
こういった体型の場合、同じく肩がなだらかなつくりになっているラグランスリーブが合うと考えます。

このようにコートの形を下に着る服の構造、もしくは体型に合わせることで、コートに不自然なシワが入らず、自然な形でスッキリと着ることができます。

袖は1枚袖か2,3枚袖か

次に袖は1枚袖か、複数枚袖かという選択になりますが

まず先に1枚袖とは、複数枚袖つまり2枚袖または3枚袖とは何かということに触れていきたいと思います。

1枚袖は袖のパーツが一枚の布で構成されているものです。袖の形状に切られた1枚布をそのままクルッと筒状にして召し合わせた部分を縫っています。なので縫い目は袖に沿って1箇所のみになります。

対して2枚袖は袖のパーツが2枚に分かれていて、2枚の布を互いに合わせて背面側と脇下側を縫って出来上がります。なので、縫い目は袖に沿って2箇所になります。3枚袖なら袖のパーツが3枚に分かれ、縫い目は3箇所になる、ということです。

では1枚袖と複数枚袖で、着用感の違いがあるのか?ということなのですが

1枚袖は単純な、平面的な形の袖、肩の形状しか作れませんが

複数枚袖とすることでより立体的で構築的なものにすることができます。

ですので、1枚袖は単純なつくりである分、肩回りや腕周りにシワ・ドレープができます。
そのためカジュアルな雰囲気になり、実際カジュアルウェアと相性が良いです。

複数枚袖は構築的・立体的なつくりであり、肩回りや腕周りに無駄なシワができにくいです。
そのためビジネス・フォーマルな雰囲気になり、実際ビジネスウェアと相性が良いかと思います。

よって袖のつくりに関してもまた、着る服がカジュアルかフォーマルなのかで選ぶという結論に至りました。

以上まとめますと、肩のスリーブ形状の選び方
着る服のカジュアル度、フォーマル度合いによって決めるということと、
自身の肩形状に合わせて決める。

そして、1枚袖か複数枚袖かの選び方
着る服のカジュアル度、フォーマル度合いによって決める
ということでした。

しかし、服の構造とは関係なく、コートというアイテム自体にカジュアル寄りであったりフォーマル寄りであったりという印象もあります。例えば昔ながらのトレンチコートはラグランスリーブのものが多いですが、スウェットやパーカーよりも、やはりスーツに合わせた方がしっくりきます。

この辺りは服の起源や、映画での着用イメージが現代でも残っているためだと考えますが…

紳士服用のコート、という時点で1番カジュアルであるスウェット、パーカーに合わせるのは避けたいところです。しかしスーツやジャケットの下に着ることもあるニットであれば、問題なく着れるでしょう。

今回のコートに限ったことではないですが、服のコーディネートを考えるときは
1つの視点でなく複数の視点、様々な角度から見てバランスを整えることが重要かと思います。

その日の気温、天候はどのくらいなのか…

カジュアルなのかフォーマルなのか…

都会で着るのか田舎で着るのか…

どんな人と会うのか…

いつ頃の季節感を出したいのか…

『動く』日なのか『休む』日なのか…

流行がどんなものかというよりも考えるべきこと、つまり服装を楽しめる要素はたくさんあるんですよね。40代以降の紳士の方々には、周りの流れがどうこうというよりも、ご自身の生活の身近なことで服装を楽しんでいただきたいと思い、こういった記事を書いております。

最後に市場にあった、良さそうなコートを紹介して終わりたいと思います。


↑ドルモアのバルマカーン(ステンカラー)コート(画像クリックで楽天販売ページにジャンプ)
少々高価ですが、ハリのあるウールギャバジン製でかなり高級感があると思われます。
セットインスリーブでベルト付きなのでビジネス用として大活躍できそうです。
ただ、現代の流行に合わせて肩幅が大きく作られていて、画像でも肩の縫い目がかなり落ちています。今の流行が終わったときにどうなるか心配ですね…。
ドルモアは元々イギリスのニットブランドでしたが、イタリアの同じくニットブランドであるCioccaが買収して、流行を意識したイタリア寄りのアパレルブランドになったという印象です。


英3大コートブランドの一角、グレンフェル。(画像クリックで楽天販売ページにジャンプ)
ドルモアより高価ですが流行に左右されず、一生着ることもできるかと思います。
品質、耐久性も最高峰ですので非常におすすめです。ラグランスリーブではありますが、今までもこれからも変わらないクラシカルな形、雰囲気ですのでスーツの上に着ても問題ないです。
正直、これ以上のものとなるとワタシはオーダー品くらいしか思い浮かびません。
ワタシも欲しいのですが、新品は高価ですので古着で探しています。汗


アメリカントラッドのJ.PRESSのコート。(画像クリックで楽天販売ページにジャンプ)
こちらも流行に左右されない形をずっと作り続けている印象です。
上記の商品はラグランスリーブで、柔らかな色味が個人的には好きです。
本来はアメリカのブランドですが、現在は買収した日本企業のオンワードが国内工場で生産しているようです。そのため欧州産のものより比較的安価ですが、品質が悪いということは全くないです。
ワタシも古着のブレザーを愛用しています。

商品紹介は以上になります。今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
より良い服装生活を!それではまた。

タイトルとURLをコピーしました